2018年、オムロン京都太陽株式会社に入社し、品質環境技術課 技術グループに配属。技術者として、障がいを持った作業者の安全で効率的な作業をサポートする設備や治具の開発に携わる。
技術グループでは、障がい者がより働きやすいようサポートする設備や治具の自社開発、生産設備の修理、メンテナンスを行っています。生産現場をまとめるフロアリーダーやラインリーダーから設備の課題や改善してほしい点を聞いて、それらの問題を解消するための生産治具や補助具、自動機などを作り、生産ラインに導入するのが私たちの役割です。
どのような製品を作っているのかはもちろん、生産工程や機械の特徴、不具合が起きやすいポイントなどを知らなければ、最適なサポート設備や治具を作ることもできません。そのため入社後はまず製造実習で生産現場を実体験するとともに、そこで見つけた課題の解消に取り組みました。
課題を見つけたのは、ライン上の部品を挟み上げて次のラインに送る工程です。ライン上に部品を置くとセンサーで感知して部品を挟む仕組みですが、片手で部品を置くよう設定されており、両手をライン上に入れると機械に手が挟まれてしまう危険があることに気づきました。
解決策を考えた末、センサーに加えてスイッチを設置。センサーとスイッチの両方を動かさなければラインが動かないようにすることで、両手が挟まれるのを防ぐことに成功しました。初めて自分が作った機械がスムーズに動いた時は、嬉しかったです。
障がいの程度や内容によって、健常者には思いもよらないことが課題や危険になることがあります。そのためどんな時も自分だけで考えず、現場を知るリーダーに「以前はどのような問題があったんですか?」と聞いたり、「こういう風にしようと思っているんですがどうでしょう?」などと意見や要望を確かめながら開発を進めるようにしています。
現在は、生産工程の最後にロット番号を押す自動捺印機の開発に取り組んでいます。片手の人や握力の弱い人でも簡単に製品をセットし、正確な位置に判を押せるよう半自動化を進めています。
それまで他の生産ラインに導入されていた機械を参考にしながら、他の製品の印字にも使えるよう可動範囲などを広げるのが課題です。製品の形や大小にかかわらず、正確な位置に押せるよう微妙に機械を調整するのが難しいところです。
心がけているのは、作業する人の視点に立って「どうしたらもっと使いやすくなるか」を考えること。また機械の角をできるだけ曲線にするなど、安全性も考慮しています。改善した後に現場から「使いやすくなった」という声を聞くと、大きなやりがいを感じます。
設備や治具の開発だけでなく、生産ラインの機会に不具合が起きた時、修理に駆けつけるのも私たちの仕事です。「機械が動かなくなった」との報告を受けて現場で機械を見ても、外見からは原因がわからないことがほとんど。通電状況などを一ヵ所ずつ確かめながら、原因を探っていきます。
少しずつ経験を積んで、最近は、作業のやり方や機械が止まった状況を聞いて、原因を絞り込めるようになってきました。
不具合が起きた時や設備を開発する際に、忌憚なく話してもらえるようふだんから生産現場のメンバーとコミュニケーションを取るよう心がけています。何度も同じことを繰り返し質問される方もいますが、あらかじめ理解していれば、戸惑わずに応えられるし、職場の仲間として不自由を感じることはありません。
毎日の朝礼では聴覚障がいの先輩から手話を教わるなど、自分自身のコミュニケーションの幅を広げることにもつながっています。
現在は、不具合や課題を見つけ、改善するための設備や治具を作るのが主な仕事ですが、これからもっと経験を積んで技術、知識を身につけ、いずれは障がいのある人も健常者も関係なく、誰にとっても使いやすく、不具合の起きない生産ラインを実現したい。それが工場の効率化や生産性の向上にもつながると考えています。